中心位の性質 ②


デプログラミングと中心位誘導は別
 
 
ここ混同しがちなので、ちょっと説明します。
患者の中心位を記録するときは

① デプログラミング
② 中心位誘導
 
の二つのステップで行います。
この二つは全く別の処置、と思ってください。
 
デプログラミングとは、「臼歯部の咬合接触を遮断し、患者の筋記憶を解除する」処置です。臼歯部の咬合接触が患者の外側翼突筋をプログラミングし、患者を咬頭嵌合位へと導きます。中心位誘導する際には、「患者に普段噛んでいる位置を忘れてもらう」必要があります。でないと患者は術者の誘導にめちゃめちゃ抵抗してきますので、再現性をもった中心位を記録するなど不可能。Downsの論文はこのデプログラミングって1時間くらいかかるのが普通だよねーって話。
 
で、実際デプログラミングの術式には以下のようなものがあります。
 
 
コットンロール(両側第二小臼歯と第一大臼歯の間で噛んでもらう)
リーフゲージ
ルシアジグ
アクアライザー
 
 
このなかでもリーフゲージとアンテリアジグは特に効果的です。これらの装置はアンテリアデプログラマーと呼ばれており、外側翼突筋にピンポイントで働きかけるからです(Williamsonの論文を参照)。
 
 
中心位誘導は患者の下顎頭を最上前方位に位置付ける処置。
そこで蝶番運動させて、任意の咬合高径で上顎と下顎の位置関係を記録する行為です。
 
で、実際の中心位誘導には
 
ドーソンテクニック
リーフゲージ
オトガイ誘導法
3フィンガーテクニック
 
などがあります。
日本だとことさらこの「誘導テクニック」ばかりが強調されてデプログラミングをしっかりやってる先生があんまりいませんが、実は逆。デプログラミングの方が大事です。患者の顎が筋の緊張でガチガチだったらどんな名人でも再現性のある中心位の記録は不可能。逆に患者の顎が十分リラックスされていれば初心者であっても再現性のある蝶番運動を描けます。 
 
で、デプログラミングと実際の中心位誘導では上にあげた術式を組み合わせればOKというわけです。
 
文献的には「ルシアジグ+ドーソンテクニック」が推奨されていますね。これで教育を行っているアメリカのプログラムも多いと聞きます。むしろリーフゲージは少数派かもしれません。
 
サンアントニオではリーフゲージでデプログラミング+中心位記録を行った後にオトガイ誘導法もしくはドーソンテクニックにて早期接触部位がリーフゲージと一致するかを確認しています。患者がデプログラミングされていればドーソンテクニックもラクチンです。
 
 
でここで気づいて欲しいのは、リーフゲージだけが「デプログラミング」にも「中心位誘導」にも登場してること。リーフゲージはそれ単体で一連の処置をやっちゃえるのでとっても便利なんです。また、リーフゲージの場合、すべて患者がやってくれるので術者に技術が必要ないというのも大きいですね。それでドーソンテクニックなどと同等の精度があるのだから、使わない手はないと思います。