「無歯顎」というのは「Diagnosis」ではありません。
単に「無歯顎患者」といっても内実は千差万別で、予後のいいケースあれば悪いケースもあります。Diagnosisは治療の結果を占うものでなくてはなりません。
総義歯におけるDiagnosisとは、患者の口腔内の解剖学的条件の「アセスメント=評価」に他なりません。この評価は「支持=Support、把持=Stability、維持=Retntion」を分析することを通じて達成されます。
支持は、咬合力に対して抵抗する要素です。
把持は、義歯を水平的に動かす力に対して抵抗する要素です。
維持は、義歯が離脱するのに抵抗する要素です。
これらの要素を総合的に判断して、患者の望む機能を持った義歯を提供できるかどうかを私たちは初診の段階でしっかりと見極めなくてはなりません。総義歯治療は患者の解剖学的条件に著しく制約を受ける治療です。しっかりとしたDiagnosisなしに治療を始めることは、地図とコンパスを持たずに航海に出るのに等しい行為です。