クリステンセン現象


普通の人の顆路傾斜は関節結節の形態によって規定されています。下図を見てください。この場合、45度というのが顆路傾斜です。ちなみに、50度がアンテリアガイダンスです。



クリステンセン現象というのは、無歯顎者に咬合床を装着し、偏心運動をさせると顆路傾斜によって下顎がガイドされ、咬合床の後方に空隙が生じる現象のことです。
 
これだけだとなんのことかよくわからないと思うので、下図をご覧ください。
 

 

図の上の写真は咬合器の顆路傾斜をゼロ度にした状態。この状態で前方運動すると上下の石膏はぴったりくっついたまま移動します。

ここで咬合器の顆路傾斜を45度にしてみます。図の下の写真です。すると、咬合器上で下顎模型を前方運動させると下顎はこの顆路によってガイドされるようになるので、石膏の後方部に隙間ができました。これがクリステンセン現象です。 

 

同じことが患者さんの口腔内でも起こります。

私たちはこの原理を利用して、この隙間の量を測ることで患者さんの顆路傾斜を記録することができます。「このくらいの隙間が空くってことは、顆路傾斜はこのくらいだな」と逆転の発想で顆路傾斜を決めるわけです。
 
5月の講義でも話した診断用マウンティングをするとき、それから総義歯を作るときにも前方や側方のチェックバイトをとって咬合器の顆路を調節するのは基本中の基本です。なぜなら、顆路傾斜によって後方歯のクリアランスが劇的に変わるからです。
 
臼歯離開咬合を目指す有歯顎の治療においても、バランスドオクルージョンを目指す無歯顎の治療においても、どちらも偏心運動時の生じる後方歯のクリアランスはその後の補綴設計に大きな影響を及ぼします。ゆえに、前方や側方のチェックバイトをとって咬合器の顆路を調節することはとても大切な作業です。
 
 
 
アメリカで行われるモノプレーンオクルージョンには、下図のような「無咬頭歯」が使用されます。当然、2枚目の図の下の写真のような「ディスクルージョン」が起こります。なので、モノプレーンオクルージョンは基本的には「ノンバランスドオクルージョン」なのです。


引用写真


1枚目の図:http://www.jaypeejournals.com/eJournals/ShowText.aspx?ID=3284&Type=FREE&TYP=TOP&IN=_eJournals/images/JPLOGO.gif&IID=253&isPDF=NO より引用

2枚目の図 : 引用元の文献を忘れました。目下のところ捜索中です。

3枚目の図 : http://www.slideshare.net/ffofr/20occlusal-schemes-monoplaneneutrocentric-concept より引用