ステュワートのパーシャルデンチャー②


ステュワートの設計では、ケネディ分類に従って設計が分類されています(クラスプ=直接維持装置)。
 
ケネディ1級→ クラスプ2つ 間接維持装置2つ
ケネディ2級→ クラスプ3つ 間接維持装置1つ
ケネディ3級→ クラスプ4つ
ケネディ4級→ クラスプ4つ 間接維持装置2つ
 
口腔内で義歯が一番安定するのは「なるべく大きな台形型」にクラスプを設置できるときだと言われております。3級、4級の症例なんかがこれにあたります。
 
一方で2級は三角形に、1級では直線にしかクラスプを置けないので安定はどんどん悪くなっていきます。2級や1級の症例で後方臼歯部にインプラントを埋入するのは「台形型」に支持、維持を改変し、義歯を安定化させたいからです。
 
口腔内の最後方レストを結んだ線を「鉤間線」と呼びますが、機能時義歯はこの線を軸にして回転すると言われております。義歯床に力が加わった時に起こる回転に対しては前回お話ししたように、クラスプの設計を工夫することで対応します。では逆に、義歯床にネバネバした食べ物がくっついて、義歯床がこの軸を中心に持ち上げられてしまうような場合はどうでしょうか。このとき、義歯の回転を防ぐのが「間接維持装置」です(写真の4枚目)。
 
間接維持装置は最後方レストを結んだ「鉤間線」からなるべく離れたところに設置します。間接維持装置を設置すると、前述の義歯を離脱させる力がかかったときに、前方の間接維持装置を支点とした2級のテコが出現しますので(間接維持装置;支点 クラスプ維持腕の先;作用点 義歯を離脱させる力;力点)、支点から作用点までの距離が長いほど、クラスプの先端に加わる力が少なくなるので義歯が安定します。
 
ケネディ1級の場合は、「鉤間線」からなるべく離れた場所に二つの「レスト」を設置します。



ケネディ2級の場合は、間接維持装置と鉤間線の距離をできるだけ長くとるために、非遊離端側のなるべく後方と前方に二つのクラスプを設置します。このうち前方のクラスプが間接維持装置を兼ねます。


ケネディ4級の場合は、前方遊離端部に隣接する支台歯にレストをおきますので、これを結んだ線が「鉤間線」となり、ここからなるべく離れた後方にクラスプを二本設置し、これが間接維持を兼ねます。大体67間にエンブレージャーレストというパターンが多いかも。このときばかりはホースシューを使うことがあります。



日本にいたころ4級のケースではクラスプ2本、間接維持なしという設計をよく見かけましたが、これでは義歯は安定するわけもなく、大概悲惨な予後をたどっていました。かといって、後方まで義歯を伸ばそうとしても、「前歯に入れ歯をいれるだけなのに、なんで奥歯まで!」という小さな義歯に慣れ親しんだ患者の抵抗に合うこともしばしば・・。
 
ちなみに、リンガルプレートは間接維持装置の役割を果たすことはないので注意が必要です。というのも、咬合平面に平行に形成された面(レスト)の上に置かれて初めて間接維持装置はその機能を発揮するからです。レストなきリンガルプレートは斜面の上に乗っかっているだけなので、間接維持装置としての機能を期待することはできないというわけです。


図はステュワートの部分床義歯学 第4版より引用